聴くファンジン「LINZINE」とは

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    どうもこんにちはクラーク内藤です。 この度、聴くファンジン「LINZINE 201809」を1カ月限定でフリー配信開始しました。



    http://www.mediafire.com/file/tc5jsmfg62fod12/LINZINE+201809.zip
    音源のZIPファイルですので、いわゆるEPとかミックステープ、またはコンピのような様相をしていますが、あくまでファンジン的な発想に基づいた音源であり、タイトルも「聴く(listen)」と「ファンジン(fanzine)」を組み合わせたものです。

    ファンジンときいて思い出すものは色々あります。定番ガレージパンクコンピ「PEBBLES」を作ったグレッグ・ショウの「Who Put The Bomp」、キングジョーさんの「SOFT,HELL!ガレージパンクに恋狂い」、奥さん(TONG)の「チェリータイムス」もそうです。今僕が連載しているドレスコーズマガジンとかもWEB上のファンジンと言えます。これらのファンジンは、その時々で興味があるものや好きなものを好きなように紹介していて、今までも何度もその熱に触発されては「あーなんか僕もこういう感じの事をやってみたいな」と思い、何かを作ったりしてきました。今回もやはりこういった熱にそそのかされての配信です。

    ただただ「いい!」と思ったものを「いい!」と言いたい。 それを文章で表現するのもいいんですけれども、音源でそれをやってみたらどうか?僕がやるんだったらそっちの方が楽しんでもらえるんじゃないか?そう思って作ってみました。

    「LINZINE 201809」は去年出した「COVERS.」の発展形とも言えます。 「COVERS.」でサンプリングやビートジャックでカバー曲をやる、というEPを初めて作ったのですが、謎の手応えがあり「これは一体何だろう?」と思いつつ「もうしばらくこういう事は続けた方がよさそうだな」という気もしていました。「ファンジン」という発想を当てはめてみた事で、合点がいったような気持ちがしています。

    「COVERS.」は「何もできねえなら何もしねえ!」という袋小路のような気分で作ったEPであるのに対して「LINZINE 201809」は何しろファンジンですので、とにかく「楽しい!カッコイイ!聴いて欲しい!」というポジティブな気分で作っています。似たような事をやっていても気分が真逆です。

    今回僕がやったカバー曲は、いわゆるカバー曲というよりは「この曲最高だから聴いて!」という気分に溢れた、ファンジンでよく見かける半分ファンレターのようなレビューだと思ってもらった方がしっくりくるかもしれません。または行き過ぎた似顔絵と捉えてもらってもいいです。

    また、何人かの友人に声をかけて楽曲を収録したり、歌ってもらったりしています。これはファンジンに当てはめるなら「ちょっと何か書いてよ」と気軽に声をかけて協力してもらったコラムや漫画のようなものと思ってもらえるとよいかもしれません。気軽に声をかけたとはいえ、協力してくれた友人達のおかげでファンジン的な世界観がグッと濃くなり、非常にブチ上がっています。

    前述の通り「いい!」と思ったものを「いい!」と言いたい、という衝動にまかせて作ったファンジンですので、引き続きその衝動にまかせて1曲ずつ簡単に紹介していこうと思います。カバー曲についてはマッシュアップ的な意味合いもあるので、今回はサンプリング元も公開しようと思います。

    ・埼玉県民謡「石投げ踊り」 (sampled:Post Malone [Psycho])
    去年から民謡DJユニット、俚謡山脈と一緒に曲を作ったりライブをやったりしています。この曲もライブのレパートリーの一つです。
    俚謡山脈との曲作りは非常にバンド的だなと思っています。お互いに最近聴いた曲を「これカッコイイ」と教え合ったりして、最終的に「じゃあそんな感じで」と言って毎回なんとなくやる事が決まっていきます。その中では民謡や現行のヒップホップやロックンロールが並列に、ただ「これ最高」というだけで分け隔てなく列挙されていて非常に楽しいです。ライブを見たり音源を聴いてくれた人にはその感触が伝わっていると思うのですが「もっと知って欲しい!」と思い収録しました。

    ・Merry Delo「SCOOTER」 (sampled:THE BOYS[SODA PRESSING])
    最近のヒップホップは見た目的にもマインド的にもパンクっぽいと思っています。70'sのパンクをずっと聴いてきた人達は今こそヒップホップを聴くと楽しいはずです。
    「SCOOTER」は「何てリアルな歌詞だ!エディー・コクランみたいで超カッコイイ!」と興奮しました。この曲の主人公は音速のようなスピード感を感じているに違いない、という所まで妄想が働いてしまった為、疾走感のあるパンクロックでカバーしました。是非本人が歌う原曲を聴いて「こっちの方がヤベー!」と思って欲しい。

    ・Hideyoshi「くだらない」 (ゲストボーカル:ROCK -A-CHERRYあきちゃん) (sampled:The Undertones[Teenage Kicks])
    この曲もやはり「最近のヒップホップはパンクっぽい」という気持ちがあってカバーしました。この「くだらない」を聴いてから色んな曲を聴き直したくなりました。The Undertonesは勿論、The Real KidsやThe Rubinoos、The Only Onesなんかが新たにフレッシュな響きをもって聴こえるようになり、凄く楽しかった。 最初は自分で歌ってみたのですが、「その内また何か一緒にやりましょう」と話していたあきちゃんを思い出しました。あきちゃんはROCK-A-CHERRYという「素敵に切ない儚い鋭いドキドキ(バンドの歌詞より引用)」パンクやロックンロールのバンドをやっていたので「うってつけ!」と思いオファーしました。ROCK-A-CHERRYはどうも実質活動停止中のようですが、先日聴かせてもらったあきちゃんの未発表曲のデモは相変わらず最高でした。シンプルなバンドサウンドにカッコイイ言葉が乗るだけで起こるマジックがあり、変な事ばっかりやってる僕は「何で普通の事やっているのにこんな最高になるんだ!?」といつも混乱します。新しいバンドメンバーを探しているようなので誰か是非!あの曲を早く新しいバンド、ライブで超聴きたい。

    ・「これ以外」BAD HOP cover (sampled:The Five Discs[Zoom])
    「最近のヒップホップはパンクっぽい」という話をしてきましたが、以前山下達郎は「ヒップホップはドゥーワップの孫」と発言していました。おそらくは多くの人にとってはこちらの方が納得しやすい感覚だと思います。
    昔のアメリカのドゥーワップのグループとBAD HOPを重ねて考えてみると、「仲間達とマイクだけで稼いで苦しい生活から抜け出そうとする少年達」という姿は確かに同じですし、なんともエモい気持ちになりまして「是非カバーさせてください!」と。今日本でヒップホップを聴いてる人は全員聴いてると思いますが、これからまだまだ聴く人が増えて欲しいと思っています。

    ・「動けば寒い」橋本夢道 cover (sampled:Migos [Walk It Talk It])
    「聴くファンジン」って発想だったら今後も結構色んな事ができそうだなと思ってまして、できれば音楽的ではない要素も入れておきたいなと思って割と制作期間の終盤に作りました。
    自由律俳句なんですけれども「動けば寒い」ってメチャクチャ好きなんですよ。たった7文字で全部伝わる感じがします。この俳句を思い出す度に「なあ?調子のいい事ばっか言ってるヤツはすっこんでろ!!」と100%賛同してムカムカと腹が立つのが嬉しいです。

    ・「ホーハイ節」青森県民謡 cover (sampled:The Fabulous Wailers [Wailin'] )
    これも俚謡山脈に教えてもらった民謡のカバーです。民謡とロックンロールも僕の中では繋がっているので、その2つを組み合わせた曲も収録しておきたかった。この「ホーハイ節」に関しては「奇声感」がTHE CRAMPS的にトラッシュなガレージパンクを想起させられて凄く好きです。
    民謡はロックンロールのように聴こえる事もあればヒップホップに聴こえる事もある、自由な音楽だと思っています。「市井の人が歌っているという感覚」、簡単に言うと「ストリート感」とも言えますが、その手ざわりが僕にとっては馴染みやすいです。
    最初に俚謡山脈のDJを聴いた時に感じた「民謡はロックンロールだ!」という直感の正体を探るべく、少しずつ竹内勉の本を読んだりアメリカ民謡の事を調べたりしていますが、楽しいです。ここでたくさん書けるだけの知識や見解はまだありませんが、引き続き調べつつまた少しずつ表現していきたいと思っています。

    ・井上陽水「最後のニュース」 (sampled:Future[Use Me])
    ある日ふと井上陽水「最後のニュース」をトラップのフローでやったらハマるんじゃないかと思いつき、カバーしました。
    今年は演劇「三文オペラ」にてドレスコーズのしまくんから依頼を受けてクルト・ヴァイルの曲をトラップ化するという曲も手伝いました。3拍子や8分の6拍子をトラップの3連のフローのように歌う、という事は他にもできる曲があるかもしれません。
    現在、井上陽水はこの曲を歌唱する際に「フロンガス」のフレーズを「二酸化炭素」に置き換えて歌っているようです。フロンが1990年代以降は法律等により事実上使用が禁じられるようになった事が理由のようですが、今回僕は原曲のまま「フロンガス」と歌っています。これもやはり「三文オペラ」の影響です。
    普段あまり演劇を見ないのですが「三文オペラ」には非常に衝撃を受けまして。 「三文オペラ」は社会的な問題提起がされている演劇で、1928年に初演されました。それが現代においても尚強力な意味を持って響く。むしろ昔の演劇が現代でも有効である事によって「時代が変わっても根本的には何も解決できてないよ」というアイロニーを持ってより強力に響いてしまう。その事に感動し、観劇後はクラクラして言葉を失ってしまいました。
    「細かいトピックについては現代だとよくわからない」のに「核として表現されている事についてはメチャクチャよくわかってしまう」というコントラストが楽しく感じたので、この「最後のニュース」においても「フロンガス」という(おそらく)過去っぽいトピックはそのままにしながら「それでも根本的に歌われてる事は今でも通用する」という事を表現したかったんです。いやー本当に「三文オペラ」凄かったなー。
    ちなみに、ドレスコーズマガジン内の連載「文、クラーク内藤の文」では今回のブログのように好き放題に音楽の事を毎月書かせてもらっています。今までは会員の人だけが読めるものでしたが、今月から特集ページが少しだけ会員以外の人も読めるようになったようです。
    sp.dresscodes.jp

    ・クラーク内藤&ブギー・アイドル「広告」 (sampled:ブギー・アイドル [常識のある町])
    ここからはゲスト参加してくれた人達のコーナーですね。ブギー・アイドル君は「マルサスの晩餐」というイベントでよく会う友達なんですが、今年bandcampで出した「常識のある町」が面白くて。
    https://raindragonrecords.bandcamp.com/album/--4
    ジャスコテックっていうジャンルだけあって「聴いてるだけで本当にフードコートで焼きそば食ってるような気分になる!」っていうぐらい、世界観が強くて凄い楽しかったです。
    「いつか一緒に何か作って欲しいなー」と思ってたのですが、今回は既存の曲をお借りして店内放送っぽい宣伝をする事にしました。「フリーで提供しつつ広告収入で利益を得る」という所も表現してみたいと思ったのでドンピシャでした。「是非使わせて欲しい」とオファーした所快諾してくれて嬉しかったです。「常識のある町」はタイトルも凄いカッコイイ。

    ・TECHNIC RUNNER feat.クラーク内藤「鉄のナックルremix」
    これも友達っていうか、ロボなんだけど友達との共作です。元々はテクニックランナーが今年出したEP「DREAM MACHINE」に収録されていた曲で「トラップをメチャクチャオリジナルに解釈してる!」と思って凄い興奮したんです。
    https://terminalexplosion.bandcamp.com/album/dream-machine-ep
    「鉄のナックル」ってタイトルも「3連で言える凄みのある言葉だったら何でもいいや」みたいな乱暴な所も面白くて。
    前々から「頼まれてないのに人の曲に勝手にリリック書いて参加する」みたいな事をやってみたいなと思ってたんですけども「この曲でやっちゃえ」と思って、本当に何も言われてないのにある日急に「リリック書きました!remix作りましょう!」って送りつけました。あ、メンバーはロボなのでメンテナンス員のマツキさんに送ったんですけども。クソみたいな歌詞をノリノリで書いて送り付けたので「リリックて」って返ってきました。とにかく無意味という事にこだわったので改めて聴いて欲しいです。

    ・KILL CITY BOYS a.k.a. でっどえんど「DISCO SLOWRIDER」
    ゲストコーナーの最後。でっどえんど改めKILL CITY BOYSは去年「なついんださまあ」という曲で参加させてもらっています。
    https://www.youtube.com/watch?v=RkSKJtWrAZE

    KILL CITY BOYSのはやと君は元々ガレージパンクのバンドをやったり、シューゲイザーのバンドをやったりしてて、その都度コンセプトに沿って120点満点の曲を作れる天才なんですけども、KILL CITY BOYSではディスコ歌謡みたいな事をやっていて、だからってハウスとかテクノとは言わせない、みたいな絶妙な所をやってるのが凄く面白いです。バンド時代から現在までサウンドは常に変化しまくってるけど、もしかしたら筒美京平的なものが普遍的なキーワードだったりするのか?と想像したりもするんですけれども、どうなんだろう。RCサクセションとかTHE MIDNIGHTSみたいな三多摩地区のロックンロールの匂いがある所もツボです。
    今回収録した曲はサニーデイサービスのカバー。僕はこの曲のシングルはリアルタイムでCDで買って、カップリングのリミックスも原曲も「わーどっちも同じぐらいいいのすげー」と思ってポータブルCDプレーヤーに入れてずーっと聴いてました。(あの頃の3〜4曲入りのマキシシングルって曲が少ない分ずっとリピートできるアルバムって感じがして凄い楽しかったなー。)だからってリアルタイムで聴いてた僕がカバーしたら絶対こんな風に良くならないんですよね。音の感じもそうだし、20代の人達がカバーしてる事も含めて「2018年なんだなー」という事を感じます。

    ・クラーク内藤「編集後記201809」 (sampled:Superorganism [Night Time])
    ファンジンだから最後に思ってる事をサクッと言って終わろうと思って作りました。オリジナル曲って感じじゃなくてあくまでファンジンの編集後記として聴いてもらえると嬉しいです。一応歌詞っていうか、まぁ歌詞を載せておきます。

    まだ会った事のない旧友がいる
    まだ通った事のない帰り道がある
    分断すんな
    全ての音楽は繋がっている

    以上。
    「聴くファンジン(listen+fanzine)」で「LINZINE」と名付けた事は冒頭に書きましたが「繋がるファンジン(link+fanzine)」とする事もできるな、というのは作ってる途中で気づきました。
    Superorganismは色んな国の人達が一緒に曲を作ってる感覚がこのファンジンを作る気分と一緒だなと思ったし、今年この曲の脳内再生回数がメチャクチャ多かったのでトラックに使う事にしました。

    他にもいくつかアイデアがあって試していたんですけれども、ボツにしたり「今度でいいや」としているものもあります。
    例えば「小坂忠『ほうろう』をポリリズムとかクロスリズムで歌ったらceroっぽくなるんじゃないか?」と思ったんですが、結果ならなかったです(笑)。 「何でだろうな?」と考えていたのですが、例えばこの記事を読んで「あー足りないのはこういう所かー」と思ったりもしました。
    三浦大知、w-inds.、宇多田ヒカル、小袋成彬、cero……変化する日本語ポップスの譜割り

    音楽を聴くのも好きですし、こんな風にあれこれ考えるのも楽しいです。

    音源は「ずっと店やライブハウスに置かれっぱなしのファンジンもないだろう」という事で1ヵ月限定での配信になります。ちょいちょい言ってるんですけどもインターネットの「永遠にある」っていう感覚ってちょっと色っぽくないなという気がしてて。色気が出るのってやっぱりだいたい「死」とか「終わり」があるものじゃないですか。1ヵ月経ったらダウンロードのリンクやSoundCloudからも消す予定です。

    「聴くファンジン」っていう発想だったらもっと色んな事できるな!っていうか今まで我慢しがちだったやりたい事全部できるんじゃないか!?とも思ってまして、シリーズ化してもう少し継続したいなと思っています。「201809」って入れてるのはそういう理由です。でもペースとしては案外半年に1回ぐらいになる、かなー。

    ひとまず第1号の「LINZINE」です。 よろしくお願いします。

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